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福田尚代 略歴  1988-2009
 
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1988

日記帳の文字を一つずつ消していく。
10年分のメモ用紙を繋ぎ合わせる。壁一面に貼る。
小学時代から集めていた「級友たちが最後まで使いきらなかった消しゴム」を一列に並べる。
レモンの皮や一口パイ皿で小さなボートを作る。冬の山小屋へ行く。雪の中に並べる。雪だるまを乗せる。帰る。
色とりどりの積み木を作り、小さな墓を建てる。西日の中に並べる。
コーヒーカップとソーサーとスプーンを白く塗る。スプーンのくぼみに小さな文字を書く。
数ミリ角の紙片に言葉を書く。街を歩きながら貼る。床の染みや壁のひび、曲がり角や地面の穴。
大量の数ミリ幅の紙片に「生きてる」と書く。電話帳を開く。一人一人の名前の余白に貼っていく。
 
1989
点描画を一日一枚描く。一つ一つの点を見つめていると、突然言葉にしか見えなくなる。
微細な文字で一冊の本を書き写す。
ありとあらゆる記憶を極小の文字でぎっしりと板に記す。
 
1990
少女漫画の瞳の星をとり出す。一面に並べてから、吹き消す。
平面一杯に小さな「墓」の文字を鉛筆で書く。題名は〈世界は蜜でみたされる〉
ひとりでロードス島の蝶の谷へ行く。はばたきに触れる。
 
1991
小さな「蓮」という文字を約40万回、万年筆で繰り返し書く。
 
1992
郵便局で働きながら回文を書きはじめる。
 
1993
毎日回文を書いていた。郵便局と回文。
 
1994
言葉の通じない国の森へ。以降6年間、度々荒野で過ごす。
回文集『無言寺の僧』制作。
郵便物、切手、折り紙を使ったコラージュに没頭。
FMラジオ局の深夜番組で、毎週日本語の物語や架空の手紙を朗読する。多分誰も聴いていない。
 
1995
森の中で回文を書く日々。
タイプライターで回文を印字したあとの、黒いカーボンを並べる。微かに読めるがやはり読めぬ。
 
1996
回文集『言追い牡蠣』制作。日本語の通じない山の印刷所にて。
 
1997
森や砂浜で、木の枝、石、貝殻を並べる日々。
 
1998
湖の近くへ引っ越した。留守中のお屋敷の住込み管理人をしながら、湖の周りを毎日走る。
 
1999
海の近くへ引っ越した。海岸線を毎日走る。
 
2000
収集した古いハンカチを脱色する。誰も見ないうちにすべて風に飛ばす。
帰国。
 
2001
消しゴムに彫刻をはじめる。
プラネタリウムの解説の仕事に就く。宇宙について調べて原稿を書き、機械の操作をしながら暗闇で話す。
 
2002
鎖編みにした青い糸の水平線。回文を印字した極小の洗濯物を波に吊るす。
回文の水滴を封じた顕微鏡のプレパラートをミシン針の上に整列させる。
ステッドラーの白と青の消しゴムを砂浜と海に見立てて孤島を作る。色鉛筆の芯の密林。
同じ素材でミニチュアの氷河も作る。
ステッドラーの消しゴムの青い帯を水平線に見立てる。文字を所々削って別のテキストにする。
回文集『小さくなってのこっている』制作。
細長い原稿用紙の栞を作成。升目に切り込みを入れて窓に見立てる。 
ろうそくの内部に螺旋階段や小部屋を彫る。
 
2003
本の頁を半分に折り込んでいたら異形の生物に出会う。後の〈翼あるもの〉の原型。
本を切断する。〈ハックルベリー〉と名付ける。〈書物の骨〉の原型。
本の栞紐を切り離し、洗濯して脱色する。『書物の魂』と呼ぶ。
鉛筆を人型に彫刻する。『牧神』と呼ぶ。
大量の割り箸を出来る限り細く削る。ほうき草を育てる。刈りとってほうきを作る。削り屑を掃除する。
本に刺繍をはじめる。
家中の本に彫刻をする。
 
2004
回文集『瀕死の神秘』制作。
無数の錠剤をくり抜いて舟形に彫刻する。
錠剤をくり抜いて托鉢の鉢にする。
割り箸の削り屑の掃除を終える。解体したほうきで鳥の巣を作る。
少女漫画のせりふを刺繍で消しはじめる。 
 
2005
大学で美術史等の講義をはじめる。
広辞苑の頁を鉛筆で消しはじめる。
小さな小さな折り紙の動物たちを行進させる。とても長い距離。
 
2006
この年は、部屋のチェストのひきだしの中に蜜蝋粘土で冥府を作っていた。
椅子の中に水脈も掘っていた。
 
2007
回文集『飛行縫う戀』制作。
回文集『福田尚代 初期回文集』制作。
子どもたちが最後まで使いきらなかった消しゴムを円く並べる。
白色鉛筆に今は亡き女性たちの名前を刻印する。一方的な恋慕というか。
本に白い糸で刺繍をする。
岩波文庫の半透明のカバー紙には表紙の文字が薄っすらと乗り移っている。後の〈言葉の精霊〉の原型。
 
2008
名刺の活字を刺繍で消しはじめる。小さくなって言葉の線を辿る巡礼。ずいぶん長い距離。
郵便物の文字を刺繍で消しはじめる。
ロードス島のホテルのカードにも刺繍をする。
消しゴムに緑の糸で刺繍をする。〈my mossy gravestone〉
方眼紙と伏せた紙コップの底に刺繍。
 
2009
回文集『霜の中の仮名の文字』制作。
大学辞職、ふたたび郵便局へ。
回文を活版印刷した封筒の作成。
回文集『寡婦と香草』制作。
〈書物の魂〉(2003)を洗濯してアイロンをかける。栞紐の繊維を指でほぐす。綿状になるまで続ける。〈書物の魂、或いは雲〉と改題。
消しゴムの彫刻〈円形墓地〉制作。
記憶のある限りいつも手許にあった三冊の小さな本に刺繍をする。〈書物の銀河〉〈書物の陽光〉〈書物の雲〉
〈翼あるもの〉(2003〜)同士が会話をはじめる(というよりは、彼らが互いに会話をしていた事実にようやく気が付き、本来の順序に並べ替える) 。
 
 
 
 
 
 
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